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イギリスでの大容量コンテンツアーカイブシステム構築プロジェクトに関して

09/05/18

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先日、当社が取り扱っているRAID製品の開発製造元のXyratex社が興味深いプレスリリースを発表いたしました。 このプレスリリースは先月21日よりラスベガスで開催されたNABコンファレンスに合わせて発表されたものです。NAB(National Association of Broadcast)では、集まる参加者の殆どがAudio/Video の制作、編集、配信等の映像/放送関連の業務に携わっているか、関連業界の人々です。
今回Xyratex社が発表した内容は、イギリス政府から約4億5千万円の助成金を受け、BBC と エディンバラ大学、サウサンプトン大学、ストレージサービスプロバイダプロバイダとして Ovation Data Service 社、そして、ストレージ製品ベンダーのXyratex社が協力した、ビデオ/オーディオコンテンツのアーカイブソリューションの開発プロジェクトに関するものです。
(弊社ニュースリリースをご参照ください。http://www.micassoc.co.jp/micnews/09_05_12.html )

デジタルコンテンツの長期保存目的でのアーカイブと、貴重な資産としてのデータを保存する業務としてのアーカイブという2つのアーカイブ間のギャップを埋めるこのプロジェクトはAVATAR-mと名付けられ、デジタルオーディオビデオコンテンツの為の革新的な大規模アーカイブストレージソリューションを開発することを目的としています。
このプロジェクトにおける鍵となる技術として、大規模ストレージアレイとマネージメントソフトウエアが上げられています。システムはエクサバイトの規模になることを前提にデザインされ、クラウド分散ストレージ技術を含む広い範囲の技術を融合させ実現する予定です。また、ボリューム容量、安全性、コスト、可用性というユーザー要求に基づきストレージを決定することを可能にするツールを用意し、コンテンツにアクセスするチャネルやサードパーティーのストレージサービスプロバイダを含むアーカイビングビジネスのモデルが検討されます。

このプロジェクトの背景
AVTAR-mのホームページ(http://www.avatar-m.org.uk/)では、今回のプロジェクトに関する概要をダウンロードすることができます。その中では、今回このプロジェクトの背景として以下の様な内容が言及されています。

「現在の新しい情報の90%はデジタルであり、人類が過去に作成した総ての情報より今後2年間で作成するデータのボリュムの方が大きくなります。これはデジタルオーディオビデオコンテンツにおいても同様です。例えば、YouTubeのデータは毎月20%ずつ増加しています。毎月のデータの増加は年間にすると300%もの増大になります。
プロのオーディオビジュアルの世界においては、1千万時間のコンテンツが存在していると推測されています。放送アーカイブは毎年5百万時間ずつ増大しています。今日の高精細な解像度と高いフレームレートのコンテンツデータが必要とするストレージボリュームを考えた場合、アーカイブのための物理ボリュームは、18ヶ月毎に倍以上増加することが予想されています。従って、AVメディアを制作、配信、視聴するための新しいデバイス、技術、サービスやビジネスモデルを考えた時、我々はどの様にこれらのコンテンツをアーカイブし、将来に渡ってそれらにアクセスできるかを考える必要があります。
クリエーション、デストリビューション、アーカイブはそれぞれのプロセスを切り離しては考えられない問題ですが、往々にして、アーカイブは後で考える問題として扱われ、コンテンツの新しい形式や経験が出て来た時点での取り上げられることになります。
我々は既に、現在のコンテンツを保存するためのシステムが、アーカイブコンテンツを保存するものより小さいと感じさせる世界に生きています。アーカイブコンテンツはより頻繁に再利用され、プロダクションや配信プロセスにおいてアーカイブコンテンツを組み入れる必要性が存在しています。独創的なオリジナルコンテンツを施錠をした特別な場所に補完するという概念は、既にその意義を失っています。現在では、一連のダイナミックな保存プロセスとしてアーカイブを制作、配給、配信、利用、視聴のワークフローに直接組み込む段階にきています。
BBC Digital Media Initiative プロジェクトは次の5年間以内に全組織において完全にテープレス環境を実現することを目標にしています。例えばBBCと独立系のポストプロダクション等の外部とのシームレスなワークフローにおいてもアーカイブを重要な部分として組み込まれます。」

以上がAVTAR-mプロジェクトが始まった背景ですが、2年程前に筆者が話を聞いたBBCのエンジニアも「BBCでは延べ200kmに及ぶアナログフィルムが存在しており、デジタル化を待っている。」と話していました。この状況はBBCに限らず全世界が直面している課題と云えます。AVATAR-mプロジェクトはこの課題に対して以下の目標を掲げています。

プロジェクトの目標
プロジェクトの目標として以下の3項目を主要なテーマとしています。

・GRID型のストレージとホスティングサービスモデルを前提に、安全で管理されたサービスをアーカイビングのインフラとします。Web ベースのアクセスプロトコルによるコンテンツアクセスを実現し、サービス品質、コンテンツの保存期間等を定義した条件でサービスを提供できる様にします。
ストレージはクロスプラットフォーム環境で、あらゆるタイプのストレージを含めたGRID型のストレージとして構築されます。今回のソリューションで強調されていることは回転するドライブであろうとジュークボックスであろうとNASやSANであろうとユーザからみるとネットワークストレージであることです。更に、サービスとして提供されるオンラインのリモートストレージとしてAmazonのようなサードパーティーストレージサービスを使用することも可能になります。

・それぞれアーカイブマネージャーによって異なる感心事項を、ディスク、テープ、ネットワーク等の特定のテクノロジーソリューションから切り離すことができる多層のアーカイブモデルを使用する。また、コンテンツデータをアーカイブ、または削除などの指定をするために、取込み/アクセス/保存期間等に関するプロファイルを用意します。その為に、各コンテンツにはアーカイブデータとしてのその属性情報が添付されて保存されます。
それぞれのコンテンツアセットに特定のストレージ階層を割り当てるより、コスト、アクセスの頻度のような使用目的に応じてダイナミックに階層化されます。コンテンツはアクセスされる頻度によって、ストレージの高い階層から遅い階層に配置され、モニターされます。ルールはファイルのタイプや所属、または、プロジェクト等の特定のアイテムによって適用されるマネージメントポリシーによって変更されます。

・コンテンツ中心のワークフローを分析することができる予測技術とモデリング技術を開発し、アーカイブにおけるそれぞれのワーププレイスでのロードや、時間軸レンジで起こりうる変化を予測を可能にします。そして、サービスプロバイダとユーザーの間でアーカイブサービスへのアクセスの期間を締結することができる様にビジネスモデル、プロセス、関連性を調整し、サービスプロバイダと顧客間で品質、期間等を含む多角的なサースビレベル(QoS)の合意(SLA)に基づき、リソース(アプリケーション、データ、プロセス、ストレージ)を取引をビジネスとすることを可能にします。  

プロジェクトのゴール

AVATAR-mプロジェクトのゴールは大規模ストレージシステムを用い、膨大なデジタルAV素材を安全に長時間保存すると同時に、多くの人々がアクセスすることが出来るようにすることです。アーカイブに価値のあるデータをゆだねるには、確実にコンテンツ資産を保存し、バックアップを取り、保存期間は短期間のことではなく、5年、10年、50年という時間で保存される必要があります。
プロセス、ソフトウエア、ハードウエアが年内に開発完了予定の AVATAR-mプロジェクトは、比較的に低コストで、経済的、充分利用できる基盤技術としてユーザのニーズに応えられるソリューションを目指しています。

Xyratex社はこのAVTAR-mのプロジェクトのストレージ製品プロバイダとして、また同様に SNIA(Storage Network Industry Association)の主要メンバーとして、このプロジェクトに積極的に参加するとのことです。
弊社でも今後このプロジェクトの推移を観察し、報告して行きたいと考えています。

 

【関連リンク】
・ 【リリース】超大容量デジタルアーカイブソリューションをNAB 09にて発表